#1|KASHIMA 静を感じる

街の雑踏から離れた日。
静寂の中で聞こえたもの。

#1

街の雑踏から離れた日。
静寂の中で聞こえたもの。

どこにいても人の声や音楽が入ってくる時代。
私は、静かな時を求めて、鹿島市へと向かった。
目的は、「祐徳稲荷神社」への参拝。
そして、そこからほど近い場所にある写経を体験できるお寺「誕生院」だ。
厳かな雰囲気の中で過ごした休日。
スマホをオフにして、大切なものとゆっくり向き合えた休日になった。

  • まず、降り立ったのは、肥前浜駅。昭和のはじめの姿を復元した駅舎が、なつかしさを感じさせてくれる。ここは、伝統的な家並みや酒蔵などの建造物を残す「肥前浜宿」の最寄り駅。
    まだ、鹿島に来たばかりなのに、素敵な旅のはじまりを感じた。肥前浜駅では、自転車を借りることができる。せっかくだからひと駅ぶん漕いでみよう。早速またがり、ゆっくりと漕ぎ出した。

  • 景色を満喫しながら市内を自転車で走り、到着したのは「誕生院」。あたたかい笑顔で迎えてくれたのは住職の山口光玄さん。「どうぞ、お入りください」の言葉に、心が和む。中へ入ると、白檀の香りに気づく。ふくよかで優美な香りに、気分がふわり。そして、建物全体に静けさが広がり、生活音が聞こえない空間が日常を忘れさせてくれる。
    ここで体験してみたかったのが、「写経」の体験。写経とは、お経を書き写すもの。誕生院では、お寺を身近に感じてもらえるように、写経体験を実施。ステイホーム期間中には、ホームページで写経用紙を提供し、たくさんの人たちが心を平静に保つきっかけとなったそう。

    写経の席に着くと、まずは「塗香(ずこう)」で、身を清める。山口さんから説明を受け、いよいよ写経がスタート。一文字一文字、心を込める。難しい字が並んでいたり、自分の字の幼さにへこんだり。筆先に集中して、次第に没頭していくのがわかる。気軽にできる体験の中に、厳かさと程よい緊張感。最後の文字を写す頃には、あっという間に1時間が経っていた。本当に「無」の中にいたことを実感。終わった後の達成感と開放感が心地良い。書きあげた写経は、誕生院に永代奉納されるらしい。
    帰り際に山口さんからかけられた「心を落ち着かせたいとき、いつでも来てください」という言葉が忘れられない。心が休息する時間を、自分にプレゼントできた気がした。

  • 鹿島でもうひとつ訪れたい場所。日本三大稲荷に数えられる「祐徳稲荷神社」は、商売繁盛や家運繁栄などのご利益で信仰を集め、海外からの参拝者も多い。総漆塗りの社殿は、艶やかな朱色で、思わず見とれてしまう。まさに、パワースポットという言葉がふさわしい。山道を登り、奥の院まで行けば、さらに静かな空間が広がっていた。
    街の雑踏から離れた休日。自分としっかりと向き合えた1日になった。